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SAI DIARY

リンガル矯正に欠かせないマイクロスクリュー(矯正用インプラント)のお話です。

「他院で、矯正相談に行った所、外科手術を勧められた。第一大臼歯が保存不可なので、親知らずを移植したら良い」と言われて、相談に来られました。
今まで出会った女性で、一二を争う出っ歯でした。そして、口元以外はとても綺麗な女性で、絶対に治してあげたいと思ったのです。
上下左右4本の6歳臼歯(第一大臼歯)が全て神経がなく、そのうち3本はホープレスでした。
その3箇所には、幸いにも親知らずが手付かずで残っていました。
一番マシな6歳臼歯の部位の親知らずは、神経が無く歯の形も原型を留めていません。

矯正の際に抜歯する歯は、ほとんどが小臼歯です。
大臼歯を3本も抜くなんて、あり得ないので、残したまま、小臼歯を抜いて、大臼歯がダメになったら、親知らずを移植すれば良いと、前の先生は考えたのでしょう。

その先生は、矯正専門で、自分では歯も抜かないし虫歯も治さないという先生で、外科の先生に、骨切って、親知らずを移植してという紹介をしておられました。

抜歯も、移植も、インプラントも自分でしている私は、移植の成功率と平均残存年数分かっているのか?!と少し頭に血が上りかけました。若い頃なら仁王立ちかも知れません(^_^)

歯の神経がある事は、最終的にとってもとってもプラスです。
だから、親知らずを一度抜いて、違う所に植えた時点で、神経は切れて、神経がない歯になるので、無傷の親知らずを骨から離すのは、良く良く考えて選択すべきだし、わざわざそんな事しなくても、インプラントがあるわけですから、小臼歯抜く必要あるのか?と考えました。

まず、頭部CTを撮影して、骨格と歯性分析をしてみました。
そして、もう使えそうにない6歳臼歯を無かったことにして、第2大臼歯を第1大臼歯として分析してみることにしました。
すると、前歯はもう分析グラフに印刷できないくらい飛び出ていますが、骨格は異常がなく、かつ大臼歯の位置もこれで良いという結果でした。

このCTは、本当に役に立っています。思い込みで診断するミスも防げるし、インプラントの手術で神技を要求されることも無いですから。この患者さんも歯が出過ぎてオペケースだ!と思ってしまいそうですが、骨は意外にも出てなくて、それが私が初診で感じた「口元以外は綺麗な人」という理由なのでしょう。

この分析結果から、第一大臼歯抜歯すると決めたのですが、そうなると、アンカーがありません。そして、最終的な噛み合わせを確認するセットアップモデルによると、この第一大臼歯代わりの第2大臼歯は、前方へ動かしてはならないし、小臼歯を含む前歯部軍10本を挺出させず後ろへ移動する必要があったのです。

ここで活躍するのが、矯正用インプラントです。
上顎で埋入し易いのは、口蓋正中です。最初に入れた時は、歯がない場所に何か入れる経験が無いので、変な汗をかいたものです。そして、この治療法を思い付いた先生をスゴイなぁと心底思いました。

もっと小さな部位にももちろん便利ですが、この患者さんに限っては、矯正用インプラントが無かったら、治療が出来なかったと思うのです。

そして、1本だけ抜歯しなかった第一大臼歯の手前に、もう起こせないくらい倒れている小臼歯があったのでそれを抜歯しました。
将来、この第一大臼歯がダメになったら、インプラントをきれいに入れましょうとお話ししています。その頃には、とっくに矯正が終わっているので、その場所にインプラントを埋入しても問題ありません。

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